高齢者施設における色彩設計
- ganagao
- 3月29日
- 読了時間: 5分
更新日:4月3日

高齢者施設の色彩計画は、入居者の心理的な安心感や快適性を高めるとともに、
認知機能の低下を考慮し、見やすく分かりやすい環境を整えることが重要です。
適切な色の使い方によって、
居心地の良さや安全性、行動のしやすさを向上させることができます。
1. 高齢者施設における色彩設計の基本原則
(1) 落ち着いた色調で安心感を与える
刺激の少ないナチュラルな色彩(ベージュ・アイボリー・ライトブラウン・ペールグリーン)を基調とする。
強すぎる原色やコントラストが激しい配色は避け、穏やかな印象を与える色を選ぶ。→ 例:壁はアイボリーやライトベージュ、床は木目調の落ち着いたブラウンなど。
(2) 色のメリハリで認識しやすくする
高齢者は色の識別能力が低下するため、適度なコントラストをつけることで視認性を高める
→ 例:ライトベージュの壁に対して、ドア枠をダークブラウンにすると認識しやすい。
共同スペースと個室の床材などに差をつけて生活のメリハリをつける。
(3) 空間ごとに適切な色を使い分ける
居住スペースは暖色系やアースカラーで落ち着いた雰囲気を演出。
食堂・レクリエーションルームは明るめの暖色系(オレンジ・イエロー)をアクセントに使うことで食欲増進や社交性を促す。
廊下・共用部は視認性を高めるために適度なコントラストをつける。
2. エリア別の色彩設計のポイント
(1) 居室(個室・寝室)
落ち着いた雰囲気で安心感を与える色を選ぶ
ベースカラー:ベージュ・アイボリー・ペールグリーン・ライトブラウンなど
アクセントカラー:柔らかいピンクや淡いブルーで穏やかな印象をプラス
カーテンやベッドカバーも同系色で統一するとリラックス効果が高まる
■ 避けるべきポイント
真っ白な壁は冷たく感じられるため、温かみのある色味を加える。
黒や濃いグレーなど暗すぎる色は、不安感を与えるため避ける。
(2) 廊下・共用スペース
視認性を向上させ、歩行をサポートする色の工夫
壁と床、手すりの色を明確に分けることで、視認しやすくする。
→ 例:トイレの床と便座の色味の差をつけることで転倒事故を防ぐ
遠近感を調整する
→ 例:長い廊下には、壁の一部にアクセントカラーを入れることで、空間に変化をつける。
■ 避けるべきポイント
全面が白っぽいと距離感が分かりにくくなるため、適度なコントラストをつける。
床と壁の色が同系色すぎると、境界が分かりにくく転倒リスクが高まる。
(3) 食堂・レクリエーションルーム
食欲を刺激する暖色系(オレンジ・イエロー・ライトブラウン)を適度に使用。
テーブルや椅子のクッションなど、部分的に暖色を取り入れることで、賑やかで親しみやすい空間に。
社交性を高め、食欲を促進する明るい色を取り入れる
■ 避けるべきポイント
赤やオレンジを使いすぎると落ち着かなくなるため、壁などはベージュやアイボリーで調整。
青系統は食欲を減退させるため、過度に使わないようにする。
(4) トイレ・バスルーム
清潔感と視認性を重視
ベースカラー:白・ライトグレー・アイボリーで清潔感を確保。
アクセントカラー:視認性を高めるため、ドアや手すりをはっきりさせる。
高齢者にとっては冷える場所でもあるため、温かみのある色調を心がける。
■ 避けるべきポイント
白一色にすると視認しにくいため、適度な色のメリハリをつける。
床や壁の色が似すぎていると、段差や境界が分かりにくくなる。
(5) 玄関・受付エリア
温かみのある色で安心感を与える
また、見学者や面会をする家族にとっては施設の顔になるエリアのため、
理念や大切にしていることを語れる空間にするよう心がける。
ベースカラー:アイボリー・ライトブラウン・ペールオレンジなど
アクセントカラー:ウッド調やレンガ調の素材を取り入れると温かみが増す
■ 避けるべきポイント
暗すぎる色合いは不安感を与えるため、明るめの配色にする。
3. 色彩計画の効果を高める工夫
(1) 適度な自然光と組み合わせる
窓からの光を活かし、明るく開放感のある空間を作る。
夜間は暖色系の照明を組み合わせると、よりリラックスしやすい。
(2) 素材や質感と色を組み合わせる
木目調の家具や床材を活用し、視覚的にも温かみのある空間を作る。
カーペットやクッションの色を工夫し、アクセントを加える。
(3) 認知症対応の色彩計画を考慮
認知症の方には青・緑などの寒色系が落ち着きを与えるため、居室の一部に活用する。
刺激の少ない生活になってしまうため、入居者の記憶を刺激するようなアイテムを取り入れる。
トイレや浴室のドアは、他の部屋と色を変えて視認性を高める。
4. まとめ
高齢者施設における色彩計画は、安心感・安全性・快適性を高めるために非常に重要です。
居室は落ち着いた暖色系、共用部は視認性を高めるコントラストを意識。
食堂やレクリエーションルームは明るめの暖色を取り入れ、社交性を促進。
認知症対応の施設では、視認性を高める色彩設計を行う。
適切な色彩計画を取り入れることで、
入居者がより快適に過ごせる環境を整えることができます。
この記事では皆様の参考になればと思い、情報をまとめておりますが、
実際の設計ではケースバイケースで、パズルのような作業になります。
具体的な施設の条件に合わせた提案も可能なので、お気軽にご相談ください!
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